おかしな人からネットで悪意を向けられたら、どうすればいいか?

おかしな人からネットで悪意を向けられたら、どうすればいいか?

先日(2018年6月24日)、著名ブロガーが講演先の福岡市で刺殺される、という事件(福岡ブロガー刺殺事件)が起こった。

加害者も被害者もインターネットで匿名で活動していた者同士。二人は「はてな」というSNS上に書き込みをしており、インターネット上に記録として残っている。

それを閲覧していたおそらく数千人の人々の誰一人として、この結果を予測していなかった。

これまでもあったネット上のトラブルからの傷害事件

見知らぬ者同士のネット上のいさかいが傷害以上の犯罪にいたったケースは、これまでにもあった。

たとえば2009年9月、2ちゃんねるの書き込みに怒り狂った暴力団組員が、対立組織幹部の自動車にダンプカーで突っ込む、という事件が起こっている。

全国報道されたため、ご記憶の人もいるだろう。これも、見知らぬ者への狂気が現実となった事件だった。

指定暴力団九州誠道会の最高幹部の乗る車に(昨年)ダンプカーで突っ込んだとして暴行などの罪に問われている指定暴力団道仁会系組長、S被告(記事では実名)の論告求刑公判が(2010年1月)14日、福岡地裁久留米支部であり、被告人質問でS被告は「『2ちゃんねる』に、びびってると書き込まれたので、やった」と動機を明かした。

検察官が「(掲示板に)書き込んだのは組員と限らないのではないか」と問うと、 S被告は「カタギじゃ知らないことも書かれている」と答えた。(朝日新聞デジタル。現在記事削除)

ほかにも、ウナちゃんマンを名乗る著名なニコ生主が、別のニコ生主である鶴乃進を煽った結果、自宅のマンションまでおしかけられ、ドアをバールで叩き壊される、という衝撃的な事件が2015年に発生している。

鶴乃進さんがウナちゃんマンさん宅にドアを破壊して襲撃し警察が連行

これまでも、ネット上のいさかいが犯罪にいたったケースはあったのだ。

福岡ブロガー刺殺事件の異質性

ただ、上記の件はどちらも無頼な人々が起こした事件だ。一般人が起こしたものではなかった。だから自分とは無関係だと、多くの人は等閑視していたし、マスコミも大きく取り上げることはなかった。

ところが今回の事件は違う。

殺された被害者はIT企業で働く会社員ブロガーで、加害者は高学歴ニートだった。どちらも今の世の中を象徴しているとはいえ、一般人だ。そのいさかいが殺人事件に発展したのだから、衝撃の度合いが大きかった。

インターネット上では、日々数多くの罵り合いが起こり、匿名を隠れ蓑に、リアルでは決して使わないような辛辣な言葉の応酬がなされている。

その先に、殺人が待っていたら? 沢山の人がその可能性におののき、他人事ではないと悟りゾッとしたのだ。

もっとも、今回の事件の被害者の名誉のために断っておくと、被害者の岡本顕一郎さんは、加害者をネット上で口を極めて罵ったために殺されたわけではない。

被害者が刺殺されたのは、加害者による逆恨みだった。被害者の批評活動に、大勢の人々が賛同を示してきたことが気に食わないという、加害者側である松本英明による、完全な逆恨みだった。

おかしな人から悪意を向けられたときどうすればいいか?

彼に限らず、インターネット上には頭のおかしな人物が数多く生息する。止めろと注意しても、しつこくしつこく、嫌がらせを繰り返すような人々だ。その中には、第二の松本英光が潜んでいるかもしれない。知らない間に、こちらを殺したいほどに憎しみを募らせる人間がいるかもしれない。

彼のような攻撃者からネット上でからまれたとき、私達はどのように対峙すれば良いのだろうか? と福岡ブロガー刺殺事件を受けて、SNSで意見が交わされた。丹念に読んでいくと、

「無視すればいい」
「ブロックすればいい」
「相手にしなければいい」

というものが圧倒的に多かった。

無視して関係を断ち切れば、悪意を向けられないのか?

だが、無視すればいい、という意見に対しては、私は疑問に思っている。なぜなら、2016年に発生した小金井ストーカー殺人未遂事件 では、犯人のクレームを無視したことで事態が悪化したからだ。

小金井市の女子大生シンガーが、ライブ会場の帰途にナイフでめった刺しにされるという重症を負ったこの事件。

犯人の男は、女性へ一方的に恋慕を募らせ、異常な書き込みを続けた。被害者は周囲のアドバイスもあり、無視をすることに決めた。犯人は、このことで憎悪を募らせ、被害者襲撃を計画、実行に移した。

被害者にはなんら、落ち度はない。狂人は無視されると、余計に怒りを募らせることがある、という事実を述べている。

悪意以外を考えられなくなる病気

「偏執狂(へんしゅうきょう)」という言葉がある。パラノイア、とも言う。

何かにこだわると、それ以外に見えなくなって異常なこだわりを示すことだが、近年では精神疾患の一種とされ、「妄想性パーソナリティ障害」と呼ばれるようになった。

何ら明確な理由や根拠なく人から攻撃される、利用される、陥れられるといった不信感や疑念を抱き、広く対人関係に支障をきたすパーソナリティ障害の一類型

(引用:ウィキペディア「妄想性パーソナリティ障害」)

自分ではどうしようもない感情に突き動かされ、相手が何をしようとも、あるいは何をしなくとも、相手を攻撃することばかり、ひたすら考えるようになるのがこの症状の特徴だ。

伊豆ストーカー殺人事件でも、被害者となった元交際相手は、加害者と関係を断ち切ろうと努力したにもかかわらず、加害者は追いかけ続け、6年もの間憎悪し続け、ついには住所をつきとめ、殺害に及んだ。

攻撃者を無視すれば悪意を向けられなくなる、というのは、あまりに安易な考えだ。

ひたすら交渉を続ければよいのだろうか?

「とことん話し合え」
という意見もあった。

たしかに、頭がおかしいと思われる相手でも、時間をかけて交渉を重ねることで態度が打ち解け、問題解決にいたる、ということはよくある。

『荒らし』を撃退するベストな方法は『無視』ではない」という記事に、ネット上の荒らしにはどのような態度で臨めばいいのか、うまくまとまっている。

掲示板やコミュニティなどにやってくる「荒らし」(英語では「Internet Trolls」と呼ばれる) への対処方法として、長らく「無視する」「火に油を注がない」というのがベストだと言われていた。しかし、これよりも効果的な方法がある、という話題が紹介されている。

「やっては行けないこと」としては

1.主張に対し批判を行う
2.無視する
3.BANする/BAN要求をする
4.荒らしをするなと説得する
5.批判の対象となっているものを中止/閉鎖する

が挙げられており、その代わりに

1.相手が何を主張したいのかを尋ねる
2.相手に同意する
3.相手との共通認識を持てるように徐々に交渉を積み上げていく

という対処法が勧められている。

ただし、上記の方法は、悪意を向けられた側に過大な労力を要求する。

クレーム担当部署で用いられる「傾聴」という手法

いくら傷つけられないためとはいえ、ターゲットとなった者が、どうしてこれほど相手に気を使わなければならないのか? と理不尽に感じてしまう。

しかし、相手は狂人なのだ。理不尽であっても、災害を予防するのようなものだと考えて、あきらめて忍耐強く対応するしかないのかもしれない。

だから、カネがあり、恨みを買いやすい業界では、専門の部署が忍耐強く対応している。たとえば大手保険会社の本社には、保険が支払われなかったことに憤る人々からのクレームを扱う専門の部署が設置されている。そのうちの一人から直接聞いた話だ。

部支店、または課支社の対応に満足できない人々からの電話を受けたとき、とにかく「傾聴」し、話をさせ、相手の感情が収まるまで待つよう、教えられる。何度も電話がかかってくる。何度でも対応する。

それで業務は回るか? 回る。なぜなら業務に支障をきたすほど何十回も電話をかけてくる異常者は、大手保険会社の数十万人の顧客であろうとも、数人しかいないからだ。

とはいえ、あまりに悪質な場合は弁護士案件になるらしいが。

福岡ブロガー刺殺事件の加害者相手にはこの方法が、もしかしたら有効だったかもしれない。

数万人以上の「はてな」サービスの利用者がいる中で、彼のような異常者は滅多に出てこない。だからこそ、大勢のユーザーに彼が「異常者」として認識されていた。

はてなは、企業として、このような狂人と交渉を試み、はてなから退場してもらうように心を尽くして依頼していれば、あるいは事件は起こらなかったかもしれない。

狙いを定めた凶悪犯には、交渉はかえって逆効果

だが、交渉行為が、攻撃者にとっては思う壺の場合もあるため、一概には言えない。尼崎連続殺人事件はその典型例だ。

主犯である角田美代子は、大勢の人間に恐喝を繰り返してきた。

恐喝に耳を傾けた人間がいると、家庭に集団で押しかけ、家庭に居座り、家庭を乗っ取り、味方にならない人間は殺し、多くの家族の財産を手に入れるという悪どい方法で財を成していった。

たとえばある駅員が角田に屈した件では、角田は些細なことに因縁をつけ、一年以上に渡り駅員に脅迫を繰り返したという。私鉄の駅員だから、クレーム客をあからさまに批判も反論もできない。角田のクレームをひたすら聞き、謝罪し、ときには同意し、交渉を続けるしかなかった。

ところが、角田は一駅員と交渉を積み上げながら、相手の弱みを少しずつ握っていった。脅したりすかしたりして、仲良くなり、飲みに行き、愚痴を聞き、家族の事情を尋ね、弱みとなる情報をいくつも握った後に、駅員の家族に介入して家族を崩壊させて、退職金、家、土地などすべてを奪い、無理心中寸前まで追い詰めたのだった。

ターゲットを定め、弱みを握って利用してやろうと虎視眈々と狙う角田美代子のような人物が、SNS上にうごめいていることは間違いないだろう。

攻撃者は私達のすぐそばに潜んでいる

小金井市ストーカー事件や尼崎連続殺人事件などは、極端な例かもしれない。ただ、世の中には、事件を起こした加害者と同種の悪人が一定数存在する。

日本で2014年に発生した恐喝事件の認知件数は2,162件、1,794人が検挙されているのだ(『犯罪統計書 平成28年の犯罪』より)。検挙に至らなかった者はその数倍いるだろうから、数千人の悪人が、日本中にうごめいている計算になる。

最初の命題に戻ると、彼らのようなおかしな人間からネット上で悪意を向けられたときにどうすれば良いのかには、明確な答えはない、というのが答えとなる。

対決しようが、無視しようが、交渉しようが、どのような方法を取ろうとも攻撃を受ける場合は受けるのである。

考えてみれば当たり前。

想像して欲しい。あなたが誰かに猛烈な怒りを抱いたとする。その相手を殺そうとまで思いつめたとき、相手が何をしようが関係ない、という気持ちになることは、理解できるのではないか? 相手がどのような方法を取ろうとも、決意は揺るがないこともあるだろう、ということは容易に想像できよう。

参照:ぱくたそ

ましてや相手は狂人なのだ。なにかをきっかけに狂気が心に宿ったとしたら、その狂気を消し去るための普遍的で決定的な方法などあるはずがない。ある攻撃者には通用する方法も、他の攻撃者には通用しないだろう。

攻撃者を避けることが肝心だ

それならば私達は、どうすれば良いのか?

まずは、頭のおかしな人物やチンピラのような反社会的人物には近づかない、という予防が何より必要となる。

攻撃性を秘めた、頭のおかしな人には不思議な魅力の持ち主が多い。知識が豊富だったり、異常なほど優しかったり、話が面白かったり。反社会的性向の強い人物も同じだ。

福岡ブロガー刺殺事件の犯人にも、妙なファンがついていた。アカウントを大量に作成して、何度も粘着する姿勢、ぶれない態度に共感していた人々が事件の前から何人もいた。

私達一般人、凡人の目には、頭のおかしな人や反社会的性向の強い人の行動力が、ときにまぶしく、魅力的に映ってしまうが、それは間違いなく地獄への一里塚だ。好奇心をおさえて欲しい。

しかし、予防していても、運悪く攻撃者からロックオンされたら?

その場合、複数の他人や専門家に助言を求めた方が良い。専門家にも当たり外れがあるので、とにかく大勢の人に助けを求めることだ。知り合いがいなければ、Twitterやはてな匿名ダイアリーで相談をしてもいいだろう。

その上で、勝てそうならば、立ち向かえ。負けそうならば、逃げてしまえ。無視して済むのであれば、無視してしまえ。

立ち向かうことが悪いのでも、無視することが悪いのでも、交渉することが悪いのでもない。どれか一つに固執することが、悪いのだ。

自分ひとりだけで決めてはいけない。他人に相談しながら、あらゆる方法を試し、敵の反応を見ながら、試行錯誤の末に、生存する可能性が高いものを探りあててほしい。殺されないための特効薬的手法は、ない。

対人関係カテゴリの最新記事