独学では勘違いをしてしまう、という具体例

独学では勘違いをしてしまう、という具体例

資格の勉強をするとき、独学を選ぶ人は多いが、落とし穴にハマる人も多い。

本人は、落とし穴にハマっていることに気づかない。独学は見知らぬ夜道を光に頼らずに歩いているようなものだから、途中で落とし穴にハマっても、痛い、と思うだけで、自分が落とし穴にハマったのか、前方に崖が現れたのかがわからない。

その具体例について書いてみたい。

ぱくたそ

法律についてあまり関心のない方にとっては、よく分からない事例かもしれない。その場合は読み飛ばしてほしい。

代価弁済の勘違い

以前、法律系の資格の勉強をしていた。

数年間は独学で、そのあと資格予備校に通って学んだ。

数年間独学で勉強していた間に、ある事項を間違って記憶していた。参考書で読んで、誤読したままだったのに、そのことに気づかなかった。なぜなら頻出事項だから、模擬試験で何度も出題され、何度も間違えていたはずだからだ。

ところが自分が間違っていた、ということに気づけなかった。


分かっていなかったのは、「代価弁済(だいかべんさい)」という借金の返済方法についての考え方だ。

例を挙げながら解説したい。

ある人物が銀行から借金をしたとする。借金をした人物だから、わかりやすいように「借金太郎」と名前をつける。銀行名は誰でも知っている、みずほ銀行としよう。

借金太郎がみずほ銀行から借りたのは5000万円。借金が返せなかったときに、代わりに差し出すものとして、自分の土地・甲(6000万円の価値がある)に、5000万円の抵当権を設定した。

(なぜ抵当権を設定するのかで引っかかった人のために)

ちなみに、学生や法律の初心者、実務の初心者、ここで引っかかる。

「6000万円の価値のある土地を持っていたら、それを売ってカネをこしらえればいいのに、どうして銀行からおカネを借りて自分の土地に抵当権を設定する、という無駄な手間を取るの?」

と。

答えは、土地を売ってカネをこしらえることよりも、銀行からカネを借りることの方がはるかに簡単だからだ。土地を売って金銭化するには時間も手間も倍以上かかり、しかも時期によっては、評価額以下でしか売れないこともある。

それに、カネさえ返せば土地を取られることもない。土地を売ることには抵抗感を地主が多いから、現金がほしい地主が、自分の土地に抵当権を設定して、銀行からカネを借りるのはごくごく一般的な方法だ。

抵当権のついた土地は、他人に売ることもできる

さらに嬉しいのは、抵当権をつけたままでも、土地を他人に売ることが出来る点だ。

抵当権者であるみずほ銀行は、「借金太郎が借金を返済できなかった時に、土地・甲を借金太郎から取り上げて競売にかけることが出来る権利」だけを持っているが、土地・甲の持ち主は、借金太郎のままで変わらない。

だから、借金太郎は土地を自由に売買する権利がある。

さて、借金太郎がみずほ銀行からカネを借りた数カ月後、急に事業成績が悪くなった、とする。現金が今すぐ必要だ。そこで、抵当権付きの土地を知人・Bに4000万円で売ることにした。

もしも借金太郎が事業に失敗して、借金を返済できなくなった場合、友人・Bは、土地・甲をみずほ銀行に取り上げられる可能性がある。

しかし、6000万円の価値のある土地が2000万円もディスカウントされるのだから、買う価値はある。

いい土地はそうそう市場に出回らないので、自分のものになる可能性があれば、手を出したい。借金太郎がショートする前に転売できれば、数千万円の利益が転がり込んでくる。友人Bにとっては魅力のある取引だったので、取引に応じた。

代価弁済で問題を解決

みずほ銀行にとって、その状況はあまり好ましくない。

なぜなら、Bから土地を取り上げることはとても大変だから。

借金太郎は、自分の事業がミスしてカネを返せなくなったのだから、みずほ銀行が命じれば、土地・甲の提供に素直に応じてくれるだろう。ところが、友人・Bにとってみれば、ふざけるなと思うだろう。

裁判で徹底的に応戦するかもしれない。みずほ銀行の融資に問題がなかったのか問われる可能性がある。しかも、時期によっては土地が思う値段で売れるとも限らない。もしも少額でしか売れなかったら大損だ。

そこで利用される手法が、代価弁済、という方法だ。

みずほ銀行は、借金太郎の友人であるBに、こう持ちかけることができる。
「まだ代金を支払っていないのならば、借金太郎さんに、ではなく、私にその4000万円を支払ってください。そうすればBさん、あなたは抵当権なしの土地を手に入れられますよ」

  • みずほ銀行は、4000万円を手に入れ、借金太郎には差額の1000万円の債権を有する。
  • 借金太郎は、1000万円の借金を持つ。
  • 友人Bは、抵当権なしの土地・甲を手に入れることができる。

これが代価弁済の仕組みだ。

私が勘違いしていたこと

独学のときに勘違いしていたのは、抵当権設定者である借金太郎の有する債権だ。

借金太郎は、友人Bに土地・甲を売ったにも関わらず、代金4000万円を受け取っていない。だから、友人Bに、4000万円の債権を有するのだろう、と。

6000万円の土地・甲を、4000万円で手に入れたばかりか、抵当権すら抹消してもらうなんて、友人Bにとってあまりに虫がよすぎるではないか。

売買代金を、借金太郎ではなく、みずほ銀行に対して支払った、というたったそれだけの理由で、そんな夢のような話になるはずがない、と思い込んだ。

そうなると、友人Bは、みずほ銀行に支払った4000万円+借金太郎への未払いが4000万円、合計8000万円の借金を抱えることになる。

ただ、それはあまりにもおかしい。結局、借金太郎が返すべき1000万円分の借金が、友人Bが借金太郎に返さなければならない債権だろう、つまり、友人Bは抵当権つきの土地・甲は手に入れたものの、支払うのは本来の価格に近い、5000万円となる……。

抵当権を外してもらえれば、丸儲け

ところが、資格予備校で尋ねると、友人Bは、借金太郎には何も支払う必要はないという。

なぜなら、友人Bは、早く言えば借金太郎の5000万円の借金のうち4000万円を肩代わりしたようなものだ。

借金太郎はすでに、借金としてみずほ銀行から5000万円を受け取っている。だから、これ以上、友人Bに土地の売買代金を請求する権利はない。

みずほ銀行は、借金太郎の持つ売買代金の請求権を取り上げて、カネを受け取ったのだから、早く言えば借金太郎の持つ土地・甲を競売にかけて売る、という手間を省いて友人Bに直接売却したようなもの。

競売では評価額よりも、通常売買よりも低い額でしか土地が売れないことを考えれば、得をした、とも言える、らしい。

理解しづらい実務由来の取引

私が独学時代、こうした理屈に気づけなかった。それに気づけたのは、資格専門学校に通っていたお陰だ。

(もしかしたら、私の今の理解すら間違っているかもしれないので、もしも間違いだと思ったらコメント欄でご指摘ください。修正いたします)。

独学では、上記に挙げたようなつまらないこと、思い込みでひっかかる。思い込みを自分で気づくことは困難。

資格予備校に通えば、気軽に講師に質問できる。つまづくことも少なくなる。

私が、徒然草の兼好法師の、

すこしの事にも,先達はあらまほしきことなり。

という言葉を思い浮かべた事例である。

余裕がなくとも、資格をとるためには資格予備校などに通ったほうがいいだろう。

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