PMD56-2951 思想を表現するための腕時計

PMD56-2951 思想を表現するための腕時計

しばらく前に、転職した。

これまで私服だったのに、スーツで働くようになり、高級取りと言われる人々と行動を一緒にすることが多くなった。

そのときに気になるのが、自分の腕時計に対する視線だ。

意外に多いワイシャツの袖口を凝視する人

他人が自分のどこに視線を向けているか、意外にわかるものだ。一方で他人は私に見られていることにきづかない。たとえば私が仕事の説明をしていて、ふと顔を上げると、相手は資料ではなく、私の袖元を凝視していることがごくまれにある。

一瞬のことだが。

そのときに彼らが考えていることがなんとなくわかる。

「安い腕時計をつけているな」

ということだろう。

紳士的な彼らがそれを口にすることはない。少々扱いがぞんざいになったような気がするのも、自意識過剰なのかもしれない。

ただ改めて周りを観察してみると、みな、それなりの腕時計を腕に巻いている。自分がきちんとしている人間は、他人の無頓着ぶりが気になるものだ。彼らが私の腕時計を見たときどう判断するだろうか?

腕時計で他人を値踏みする人

新人時代に「社会人なら時計くらいは良いものを買っておけ」という言葉を一度は耳にした人は多いのではないか。私が今働いているところは旧来のビジネスマナーを大切にしている職場だから、余計にそのような教育を先輩や上司から受けているはずだ。

そんな彼らが安い時計を身に着けている人間をどう評価するかは、想像に難くない。

彼らに限らず、サラリーマン全般は、腕時計が何をしているか、意外に気にしているのかもしれない。

通勤ラッシュのときもそうだ。ラッシュアワーと呼ばれる8時半頃に電車に乗ることが多くなった。つり革をつかむと、袖口が下がり、腕時計がのぞく。ふと横に目をやると、私の腕時計を他人がみつめている。私の視線に気がつくと、苦笑した顔つきをして目をそらす。バカにされたような気がする。

これまでその視線を向けられることがなかったのは、私服だったからかもしれない。スーツを着た以上、彼らの勝負の土台に乗ったと思われたのだろうか。彼らからすると、私は敗者のように見えたのかもしれない。

素晴らしいチープカシオ

思えば他人を見かけで判断する人間が嫌いで、これまで敢えてチープカシオを身に着けてきたのだった。こちらを馬鹿にするような人間とはつきなわなければいい。

私が身に着けてきたのは、この時計だ。

写真写りが悪くて数字がうまく表示されていないが、4年以上使用していてなんの問題もなく動いている。

日時だけでははく、西暦や曜日まで表示されているのもポイントが高い。私はときどき今日が何曜日か、ときには西暦何年だったかも忘れてしまう。そんな私にとって、それが表示されているのはありがたかった。

しかも私の使っているチープカシオSTANDARD DIGITAL W-96Hは、他のシリーズに比べて、表示面積が広く視認性にも優れている。

必要な情報がそこにあり、下手をすれば5年近く電池も持つ。それでいて値段は3,000円もしない。実用主義者で、シンプルなものが好き。値段や見かけ、社会的地位にこだわらないことを信条としていた自分にとって、チープカシオは、その思想を象徴するものだった。

投資家の木下洋介という人が、人生の達人となりたいならば長年の試練に耐えた面白みがなくても質実剛健な製品を愛用するべきだ、たとえばトヨタのカローラのような……と書いていたのを思い出す(そのサイトは残念なことに最近削除されてしまったが)。

上記のチープカシオは、私にとってのカローラのようなものだった。

他人を見かけで判断する人が8割

ところが、そのようなこだわりが少々子供っぽく思えるようになった。いや、シンプルで実用的なものが好きなのは別に良いことだと思う。しかし、見かけにこだわる他人におもねらないことを信条とすることは子供っぽいのではなかろうか。

なぜなら、世の中の人間の大半はバカだ。見かけで判断する人が大半だ。そもそも私自身、他人を見かけで判断しているじゃないか。そのバカの一人なのに、自分は見かけでは判断されたくない、判断するやつはバカだ、と考えるのは自己中心的な子供の考え方だろう。

内面まで理解してつきあう他人なんて、数は限られている。大半は見かけで判断すれば事足りる。そして、その判断は大体において当たっている。私の腕時計を見て、「こいつ金がないんだな」「社会的地位もないんだろう」という判断は当たっているじゃないか。

その先、私をバカにするかどうかは相手の卑しさの問題だが、卑しい人間からバカにされて、私になんのメリットもあるまい。彼らのような人間につけこまれないようにするために、それなりの時計を身につけるのは、実用主義者としてむしろ当然の行為ではないか?

……というようなことをウダウダと考え、ようやくそれなりの時計を買うことにしたのだった。

ラインナップが豊富な腕時計

当初考えていたのは10万円近くの時計だった。

社会人としてそれなりの時計は3万円前後から、と言われている。

それを上回る10万円ほどの時計ならば、問題なかろう、と考えたからだったが、足を運んで眺め、いろいろと試着させてもらっても、どうにもピンとこない。

選択肢が多すぎるのも問題だ。都内のデパートや電気機器量販店をめぐると、数限りない腕時計が陳列されていて、目が回りそうになった。

派手派手しいもの、デュエルタイム機能など様々な機能がついたもの、宝石のようにきらびやかなものなど、いろいろある中で、当初指針のようなものがなかったためにいろいろな時計を装着しては「これじゃない」と思っては、棚に戻してもらう日々。時間だけが無為に過ぎていった。その途中では、のちほど購入した腕時計も見たのだが、そのときはピンとこなかった。

「時計は男がつける装飾品。女性の宝石のようなもの。それならばキラキラしたものがいい」という言葉を以前聞いて気になっていたため、カシオ オシアナスという時計を買おうかな、CASIOと同じでメーカーだし、青の光沢が美しいし、と考えていたものの、職場で身につけるには華美かなぁ、と思い、購入にまで踏ん切れなかった。

腕時計は自分を表現するもの

そんな折も折、腕時計について相談した友人から、

「腕時計は自分という人間をアピールするためのもの、という側面もある。自分の思想を表現するようなものを買う、という考え方もあるのでは?」

と提案されて、なるほど、と思った。

そうかもしれない。華美な腕時計を身に着けている人間は、派手なものが好きなのだろう。アップルのスマートウォッチを身に着けている人間は、最新のデジタル機器が好きな人間だろう。グランドセイコーを身に着けている人間は国産好きの年寄が多い。腕時計は持ち主の価値観を反映するものだ。

そこで考えた。原点に戻ろうと。

自分の価値観と向き合う

私は職場で、無駄の少ない丁寧な仕事を心がけている。派手な見掛け倒しではなく、質実剛健で分かりやすいものが好きだ。

正確性を心がけ、高価格過ぎず、それでいて良い品質のものを提供したいと思っている。しかし、おっちょこちょいのところもあるのが欠点。人間は間違うものだと考えている。だからこそ、どうリカバリーするかが大切になる。

以上のような観点から、以下のような点を考慮することにした。

シンプルであるためには、無駄な機能を省きたい。

今はスマホを常に身につけている。それならたまにしかたまにしか使わないデュエルタイムやストップウォッチのような機能はスマホに任せたほうが良い。

アラビア数字が良い。人間は間違えやすい。思い込むこともある。それを防ぐためには間違わないような視認性を取り入れたい。アラビア数字は誤解を防ぐ。

同様の理由からデイデイト(日付と曜日が表示される時計)が良い。曜日や日時の確認ミスは、仕事をしているとたまにあること。それを防ぐためには、スマホよりも一瞬で見てわかる腕時計に、日付と曜日が表示されていることが望ましい。

視認性を良くするために、針と背景の色は明確に区別できる方が良い。

大ポカは避けたい。巻き忘れや電池切れ、故障による時間の遅れのような、大ポカにつながるものからは距離をおきたい。秘書がいるような立場なら、誰かがミスを指摘してくれるだろう。しかしそうじゃないならば、自分が気をつけねばならない。しかし、自分の仕事は極力減らしたい。そのためにはそのような仕組みが機会に備わっていることが望ましい。

あまり重すぎないほうが良い。

選択肢が絞り込まれていく

以上のような点を考慮すると、意外に選択肢がないことに気がつく。特に、アラビア数字でデイデイト、という組み合わせが少ないのだ。

しかし、選択肢が絞り込まれた、ということは、そこから買えばいいので精神的に楽でもある。

実際に店舗で試着させてもらい、最終的に選んだのがCITIZNの「プロマスター ランド」というシリーズで、型番がPMD56-2951という腕時計だった。

この時計は良い。

私のすべての欲求を満たしていた時計は、これしかなかった。

購入して数ヶ月になるが、一度も裏切られたことがない。

電波時計なので、毎朝時計が勝手に時刻合わせしてくれる。正確無比。時刻合わせの手間が一切不要となった。

さらにはチタン製。私は以前チープカシオをつかっていたとき、長時間つけていると肌がかぶれて少し血が滲んでいた。当時はそれが普通だと信じていた。それが、チタン性の本品をつけて以来、肌かぶれしなくなったのだ。ステンレスに含まれるニッケルのせいでかぶれていたのだろうと、今になってわかった。

CITIZENの時計は信頼できる

実は当初、この時計を買う前に、ヤフオクで2000円の中古のCITIZENのソーラー腕時計を購入した。当時10万円で販売されていたシリーズだ。人間の油脂とサビだらけで、針は動かない。

それを買ったのは、高額商品を買う経験がこれまであまりなかったので、CITIZENというメーカーの高額商品の雰囲気を知っておきたかったからだ。

実のところ、G-SHOCKシリーズのように頑丈な時計を作っているCASIOか、高級時計として評価の高いSEIKOのどちらかを買う予定だったので、CITIZENは対象外だった。

SEIKOは国内一の品質だという。CASIOの良さはすでにわかっている。しかしCITIZENという商品が果たしてどれほどものか疑問だっった。一般大衆向けのものだからあまりよくないんじゃないか、と失礼ながら思ったのだ。

だから、数万円の時計を買う前に肌身につけてつけ心地などを感じておきたかった。

私は慎重な男なのである。

ヤフオクで買ったCITIZENの腕時計の油脂やサビをポリデントで落としてみた。防水機能はまったく損なわれていなかった。そして嬉しい誤算は、太陽に数時間当てると、動き出したことだ。

あれから半年経つが、1秒も遅れていない。この丈夫さ、正確性に驚き、こんなに素晴らしいメーカーの商品ならば、一生使おうと思って、新品を購入することを決断した。

PMD56-2951 その他の利点

CITIZNのソーラー機能をEco-Driveという。1回フル充電したら数ヶ月太陽に当てなくても良いすぐれものだ。そのうえ、蛍光灯のような微弱な光でも充電可能だという。

そのうえ丈夫で、傷がつかない。さすがMADE IN JAPAN(ハヅキルーペの宣伝かな?!)

曜日表示も、漢字表記と英語表記を選択できるようになっているのも嬉しい。

アラビア数字の文字が大きく、針が太くてとても見やすいのも、老眼が出てきた身にはありがたい。

また、アナログ時計の良さを再認識した。デジタルよりも、時間の幅を感じるようになったので、時間に敏感になった。

このPMD56-2951という時計、商品のライフサイクルの早い腕時計業界にあって、10年以上続くロングセラーだという。それだけ根強い人気を誇る時計なのだ。売れ続けているということは、それだけで価値があろう。

それもむべなるかな。買って数ヶ月たって、時間が経てば立つほど、良さがよく分かる。

シンプルイズベスト。

派手なものが好きだったり、社会的なステイタスを表現したいならば、ロレックスなどが良いかもしれない。しかし、実用本位で正確性を重んじていることとか、無骨で飾り気のない性格を表現したいならば、この時計は選択肢として「あり」だと思うのだ。

 

 

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